今回は猫伝染性腹膜炎(以下FIP)の投薬治療の実例についてご紹介いたします。
FIPは、ネココロナウイルス(の変異型FIPウイルス)を原因とし、主に若い子猫で発症します。
ほぼ100%死に至る病気で、恐ろしく進行も早いです。
現在、動物薬としては未承認のGS-441524(以下GS製剤)という薬がFIP治療にとても効果があるとされております。
当院では飼い主様の同意を得た上でGS製剤による投薬治療をおこなっています。
1.基本情報(患者情報および状態の所感)
- 猫種:ラグドール
- 年齢:8ヶ月齢
- 性別:未去勢雄
- 体重:3.7kg
- 主訴:お腹が膨らんできた
2.実例(検査~治療~治療後までのプロセス)
検査所見
超音波検査
・腹水貯水を認めた。
IDEXX感染症検査
・コロナウイルス陽性(バイオタイプ:FIPV)
以上よりFIPと診断し、GS製剤による治療を開始した。
GS製剤治療における生存率は約80%とされているが、症例によっては治療効果が低い場合もある。
また、未承認薬での治療となるため飼い主様の理解を得られる場合のみ選択。
また、未承認薬での治療となるため飼い主様の理解を得られる場合のみ選択。
治療所見
以下簡単な投薬治療の経過になります。
- GS製剤投与後2週間
・食欲、活性ともに良好
・腹囲膨満も軽減
・夜の発熱もなくなった
・腹水貯水は見られるが、大幅に減少を確認 - GS製剤投与後4週間
・食欲、活性ともに良好
・腹囲膨満、発熱なし
・腹水消失 - GS製剤投与後12週間
・体調、検査結果ともに良好のため内服を終了
まとめ
GS製剤は未承認の薬ため、副作用もまだまだ不明なことが多く、予想外の病態が生じる可能性があります。
当院では院内ガイドラインを定めて治療選択のひとつとして提案しています。
FIP治療に関して悩まれている方は、当院までご相談ください。