今回は皮下尿管バイパス手術(以下、SUBシステム)の実例についてご紹介いたします。
SUBシステムとは、尿管閉塞に対する治療法です。
腎臓と膀胱間にバイパスとなるチューブを設置することで、尿管とは別に尿の迂回路をつくります。このように閉塞した尿管とは別の尿の迂回路ができることによって腎臓の負担を軽減することができます。
メリットとしては処置時間が短く、動物に対する麻酔・手術負担が少ないことや尿管閉塞の再発のリスクが低いことが挙げられます。
1.基本情報(患者情報および状態の所感)
- 猫種:雑種
- 年齢:6歳
- 性別:避妊雌
- 体重:2.75kg
- 主訴:数日前から嘔吐が続き来院。
過去に尿管結石の摘出、尿管ステント設置手術を実施し、慢性腎臓病にて通院中。
2.実例(検査~治療~治療後までのプロセス)
検査所見
血液検査
・腎数値上昇を認める
BUN74mg/dl、Cre8.6mg/dl
Ⅹ線検査
・右腎陰影顕著に拡大
超音波検査
・左腎は委縮し、腎盂拡大認めず。
右腎盂は更に若干の拡大、53×33mm、腎盂が球形に近く描出される。
以上より尿管閉塞と診断し、右尿管閉塞解除手術を実施した。
手術所見
以下簡単な手術の流れになります。
- 剣状突起下から恥骨頭側にかけて開腹
- 腎廔カテーテルを腎盂内に挿入
- 尿管結石直上を切開し、結石及び尿管ステントを抜去
- 膀胱廔カテーテルを穿刺切開部より膀胱内に挿入
- 剣状突起と恥骨の中間部にポートを設置
- 腎廔カテーテル及び膀胱廔カテーテルをポートに設置
- 定法通り閉創
術後所見
術後の経過も非常に良好であり、3日で退院となりました。
退院後は定期的に(3か月おき)にSUBシステム内部を専用の洗浄液で洗浄して、尿管結石の再発によりSUBシステムが閉塞するのを予防しています。現在も通院は続いており、経過良好です。
まとめ
尿管閉塞への治療法は複数あります。閉塞部位やその子の病態によって治療プランの提案をしています。
慢性腎臓病や尿路疾患の治療で悩まれている方は、当院までご相談ください。