今回は当グループ病院で行われた、気管虚脱の症例についてご紹介いたします。
気管虚脱とは、気管が本来の強度を失って押しつぶされたような形に変形し、呼吸に障害を起こす病気です。
気管虚脱は気管の狭窄の度合により4段階に分類されます。
一番症状の軽い「グレードI」では25%以下の気管の狭窄、最も進行している「グレードⅣ」では75%以上の狭窄となります。小型犬に多い疾患で、中高齢の犬に多くみられますが、若齢の犬でもみられます。
基本情報(患者情報および状態の所感)
- 犬種:ヨークシャーテリア
- 年齢:11歳
- 性別:未避妊雌
- 主訴:ここ半年くらい呼吸が苦しそう。夏になると悪化する。
実例(検査~手術~術後までのプロセス)
検査所見
身体検査
・かすれたような、吸気努力呼吸を認める
X線検査
・頸部気管の虚脱を認める
気管内視鏡検査
・胸郭入口付近で、気管が扁平化し75%以上内腔が減少
以上より、頸部気管虚脱グレードⅣと判断し、PLLP装着術を実施した。
手術所見
以下簡単な手術の流れになります。
- 喉頭部〜胸骨前縁まで広く腹側正中切開
- 周囲組織を鈍性に剥離し気管を露出
- 虚脱した気管を確認
- 後甲状腺動脈の分岐などを電気メスで処理しながら気管を遊離させる
- 直径0.75mmのPLLPを気管に設置。虚脱部位のみならず広範囲に装着固定
- PLLPと気管を単結紮し牽引縫合
- 定法通り閉創
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術後所見
臨床症状は完全に消失し術後経過も良好となり、呼吸困難や発咳を認めることなく退院となりました。